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セミナー講演録


 トラブルが多い労務管理の要点

■トラブルは解雇時に表面化する
 中小企業で多いのは、「思ったより仕事ができない」「就業態度が悪い」などの理由で、
入社後数ヶ月で解雇するケースです。問題にならないことも多いですが、本人または友人等に組合の
経験者や労基法に詳しい人がいると事情が少し変わってきます。
 想定されることは、
 @労働基準監督署からの呼び出し
 A裁判所から訴状(訴えられる)
 B一人組合(一人でも加入できるユニオン)に加入され、その組合から団体交渉をされるなどです。
 解雇自体に関しては、1ヶ月前に解雇すると言って解雇予告手当を1ヶ月分払えば、 労基署も
問題にしません。労基署管轄外です。しかし面倒なのは、解雇は不当だと社員が納得しないケースです。
労基署は民事不介入なので、AかBのことを起こされてしまいます。
 労務問題に精通した弁護士なら、不当解雇より残業手当不払いやセクハラ・パワハ ラなどで攻めてきます。
一人組合も、悪質なものになると、会社の玄関前でビラを撒いたりもします。そして、結果的に過去2年分の
残業未払いと精神的苦痛などの損害賠償を請求されたり、職場復帰をさせざるを得なくなるのです。
 トラブルは、退職時、特に解雇された場合に表面化します。
 防止対策としては、
 @法令遵守
 A出産、育児休業を取ることや労基署に告発した事などを理由に解雇しな い
 B試用期間中でも基本的には解雇予告手当は払わなければならないし、正当な理由なしに
  解雇しない
 C就業規則に能力不足、勤務態度の悪さ、事業の縮小などの解雇条項を詳しく載せ、
  解雇するときに拠り所にする
 D入社時に誓約保証書を必ず提出させ、身元保証人も書いてもらう
 などです。
 私が顧問先から相談された労務トラブルの1つ目は、裁判には至らなかったものの、 和解金150万円、
弁護士費用に30万円が掛かったケースがあります。ですが、この顧問先の会社の場合、これがきっかけと
なって会社の規程集が整備され、いい人材が採れるようになったというケースです。
 背景としては、29歳の大学院卒の女性を採用。同社には業種的に結構、高学歴な人が入社していました。
特に女性は、大手企業で思ったような仕事ができなかった人や、 離婚した子持ちの女性が手に職をつけたい
からと入ってくることが多かったのです。
 彼女もそうした女性の一人で、経理・総務アシスタントとして採用し、コピー取り、 お茶出し、社長の秘書的な
役割もお願いすると採用面接時に話してありました。しか し、半年が過ぎたころ、コピー取りやお茶出し、
秘書的な仕事はしたくないと言い出 したのです。
 彼女に出した採用通知書には、秘書手当を支給するので残業手当はないと記載。そ して繁忙期には、
秘書手当とは別の手当を出していました。それが、他の同僚より安いのはなぜかと聞かれ、「上司の査定で
決めた」と答えたら、突然、帰ってしまった のです。
 同社は当時10名ぐらいの会社でした。そんなことを言い出した女性ではうまくいか ないだろうと「退職勧奨」
を実行したところ、彼女は退職勧奨の理由が理解できないので辞めないと主張。らちが明かないので
「自宅待機命令書」と「解雇予告通知書」 を交付しました。
 その後、相手弁護士から内容証明郵便が届き、入社に残業代未払い(入社にさかのぼって)と自宅待機時
(1ヶ月)の給与の合計約200万円、自宅待機時の精神的苦痛に対する慰謝料300万円の合計500万円を
支払えとの申し入れが……。同社は、 未払い残業代13万円と和解金60万円の支払いを回答。
結局、最終的には和解金150万円で決着しました。
 最初の内容証明郵便を抜粋すると、「貴社が本人に対して、平成9年9月11日付けで交付された採用通知書
に『残業手当は当社にはありません』との記載を確認いたしました。しかし、この採用通知書は、貴社から
本人に一方的に交付したものであり、 この記載内容について本人の意思が反映されておりません。
事務系女性労働者の雇用関係は極めて厳しく、労働者が不利益な労働条件を押しつけられてもこれを
拒むことが実質的に困難な状態を利用したものであり、右不利益状態に同意したいものの、右不利益条件
に同意しない旨の明示的意思表示をすることなく、株式会社において就労 したとしても、右不利益条件に
黙示的に同意したとみることはできません」と書かれていました。当然、同社にはそんなつもりはなく、また
あってはならないことです。
でも、相手は自分たちが法的に正しいと主張してくるので、こうした書き方になるのです。
 さらに、「採用通知書に『残業手当は当社にはありません』との文面を一方的に盛り込み、
法定内超過分の賃金はおろか法定内残業手当まで支給してくれなかった株式会社の対応は違法。
労働基準法第37条、第119条違反」と。
当時は、残業手当を支払っていなかったので、どうしようもありませんでした。


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